釈迦内柩唄

水上 勉 作

〈プロフィール〉

水上勉氏プロフィール

水上勉氏 福井県の若狭の山村に生まれ、墓守を仕事としていた父親は、亡くなった人々の棺桶を作ったり、葬祭に必要な装飾品を作る職人であった。 9歳の時に禅宗の寺に修行に出され、10年後寺を出て小説家に。 「雁の寺」で世に出て「五番町夕霧楼」「越前竹人形」「越後つついし親不知」「飢餓海峡」「金閣炎上」など多数の作品が舞台に映画、竹人形の台本となる。 「釈迦内柩唄」は1980年(昭和55年)に前進座で初演の幕を開けた。 いずれの作品も無名の庶民、弱者への立場から人間の生き方に光を当て、人間への限りなくやさしい作者の眼が一貫している。

千回公演を目指して

2001年長野市公演を観劇してくださった水上勉さん。 楽屋で出演者たちに「日本人がしなければならない仕事」と言葉を確かめるように語られ、 「全国千回公演を目指して下さい」と励ましを頂きました。

〈cast〉

有馬 理恵(薮内ふじ子役)

有馬理恵 和歌山県出身。劇団俳優座、劇団員。高校時代に「釈迦内柩唄」(浅利香津代・主演)の舞台を観て衝撃を受け、芝居の道へ。 1999年より希望舞台に参加。「釈迦内柩唄」を人生のライフワークとして活動している。 2002年、信州での公演に車椅子で観た水上勉さんが感想を寄せてくれました。 「有馬さんの『釈迦内柩唄』の舞台を観て感動し、終幕にコスモスの花が一本ずつ見えるように思った」。 2003年度、文化庁新進芸術家・国内研究生。 主な主演作品は「肝っ玉おっ母とその子どもたち」「ステッピング・アウト」「山彦ものがたり」「カラマーゾフの兄弟」「ミラノの奇跡」など多数出演。

常松 靖彦(父・弥太郎役)

常松靖彦 慶応大学文学部中退後、劇団芸術劇場に入団。 以後40年アルバイトをしながらの演劇人生。 ゴーリキーの「どん底」、モリエール「町人貴族」(2009年に1100ステージ達成)、木下順二「山脈」、野間宏「真空地帯」等の舞台に出演。 朴訥で飄々とした、どこか世間ばなれしているが、仲間から親われ、頼りにされる。酒と芝居をこよなく愛するおじさんである。 2年前、旅公演の裏方に事故があり、急場にかけつけてくれたのが縁。 今回はオンボ家族のお父の役で希望舞台で初めての出演となる。

荻原 ゆかり(母・たね子役)

荻原ゆかり 北海道深川市出身。高校時代より演劇部で活躍。 卒業と同時に希望舞台の創立に参加。 劇団の主要作品にはほとんど出演。 公演のない時は制作部として全国を奔り回る。 地味だがやさしい女性を好演している。 道産子らしい忍耐強さ、誰にでもへだてのない人柄は仲間の信頼が厚い。 器用にこなすタレントがもてはやされる時代にあって、人間の存在感があふれてくる舞台女優である。

片山 美穂(梅子役)

片山美穂 幼少から環境や社会問題に関心をもち、ジャーナリストか報道カメラマンにあこがれ大阪芸大に進学するが、 ミュージカル「レ・ミゼラブル」に魅せられて女優志望に方向転換。 上京してテレビや映画に多数出演した。 しかし、不規則な仕事、アルバイトに追われる日々の15年間、いつしか自分を見失っていたという。 お客さんと一緒に泣き笑い出来る表現者、創造者の原点に帰って新しい第一歩を踏み出そうと「釈迦内柩唄」の舞台出演を決断。 いつか自分であたためている企画を舞台化しようと意欲的な女優である。

堀越 桃子(さくら役)

堀越桃子 小学三年生の時、地元のアマチュアミュージカル劇団に入団し、そ れがきっかけで舞台でライトを浴び、人前で歌い踊る楽しさを知っ たという。
その後、様々なミュージカルや芝居に感銘を受けた。
幼稚園の時から歌手になりたかったという女の子は、舞台や映像、 声優とジャンル問わず、色々な人を演じられる役者を目指している。

藤田 尚希(崔東伯役)

藤田尚希 北海道登別市出身。日本製鋼所に勤務のかたわら、演劇サークルを主宰。 それが逆転して芝居の道へ。 希望舞台の創立期から参加。 前作「おばあちゃん」では、アルツハイマーの元校長先生を演じている。 ヒョウヒョウとして、喜劇的なのか、まじめなのか、よくわからないが、思いきりのよい演技で劇場を楽しませてくれ快優である。

伊藤 浩司(憲兵役)

伊藤浩司 岩手県 千厩町出身。高校卒業と同時に上京。 2002年に仲間と劇団「花火座」の創立に参加。 芝居は「楽しくて、誰にも感動出来るような舞台」をモットーにこれからも努力したいと意欲的。 東北人らしい、忍耐強く誰にでも好かれる人柄でチームの中でも得難い存在である。

〈staff〉

台本 水上 勉
企画 由井 數
演出 高田 進
音楽 星 ひさし
美術 福永 朝子
照明 高橋 康孝
効果 廣瀬 里奈
衣裳 井出 さおり
金井 三千代
舞台監督 杜江 良
助手 和田 緑郎
劇場制作 玉井 徳子
米田 亘
                                                           

〈劇団 希望舞台〉

私たちは、誰にでも親しまれる「現代の芝居」を求めて日本中を歩きます。
身近な生活に題材をもとめ、くらしの中の悲しみ、辛さをあたたかい笑いにかえて、日本人の笑いと涙、生きることへの生命をうたいつづけていきたいと思っています。公演に必要なすべての仕事を劇団員全員で協力してやっている職業劇団です。

希望舞台の創立は、1985年、統一劇場 創立20周年を期に分離独立。

この間「ピアニストとカラス」、ミュージカル「あした天気になれ」、井上ひさしの名作「雪やこんこん」、そしてこの3年間は、稚内の漁師町を舞台に卒業を目前に控えた女子高生とその家族の葛藤を描いた「青い空が見えるまで」をもって全国を巡演してきました。いずれの作品も、時代にとりのこされ、新しい生き方を迫られる人々や、その家族の側から、現代の新しいふるさとを描いてきました。

芝居(演劇)が今を生きる人々の身近なところで息づいていく。そんな仕事をめざしています。

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